ピーター・パン イン スカーレット

第一次世界大戦のつめあとがいまだ深く残る一九二〇年代。毎夜、悪い夢にうなされる大人たちがいた。

かれらに共通しているのは、かつて ネヴァーランドで、ピーター・パンと  いっしょに冒険の旅をしたということ。

「ネヴァーランドで何か悪いことが起こっているのよ」

あの島で何が?ウェンディの言葉に、なかまたちは、不思議の島、ネヴァーランドにもどる決意をする。もちろん、大人から子どもにもどって。そして、ふたたび島を訪れたかれらが目にしたものは……。

百年の時をこえて、名作『ピーター・パン』の続編が誕生。ピーター・パンが、ティンカー・ベルが、フック船長がきみを待っている!

◎とっちゃまんのここに注目!

『ピーター・パン』の「公式の続編」と聞いただけで、「どれどれ」と読みたくなってしまう。それだけ、もとの『ピーター・パン』のインパクトが強いということだよね。きみも、本やアニメでよく知っているんじゃないかな。

その一方で、名作の続編を別の人が書くのは大変なことだと思う。ピーター・パンという名前は、世界中で、サンタと同じくらい知られているだろう  しね。

そこで、だ。感想文を書くにあたっては、ぜひ正編と続編の読み比べをしてほしい。まず、もとのストーリーをチェック。原典がちゃんと頭に入っていると、「なるほど」と思えることが増えるし、これは、続編を読む場合の礼儀というもの。それから、二つの作品の差やちがいをとらえたい。

この「読み比べ」、きっときみの感想を深化させると思うよ。

・何を比べる?どう比べる?

この作品では、とにかく「比べる」ことがテーマに直結してくる。たとえば登場人物の過去と現在、ネヴァーランドの過去と現在。「何が」、「どうなったか」ということに注目だ。

正編と続編の此較に限定せず、しっかり者の女の子ウェンディと男の子たち、子どもと大人、ネヴァーランドと現実の世界を対比させて考えてみるのもいい。

それぞれのちがいをしっかりつかむことだよ。さらに、「作者は何を書きたかったのか」ということを想像すると、意見が展開しやすくなるだろう。

・ネヴァーランドとは?

ネヴァーランドとは何か?これはやっぱり、最重要テーマかな。ネヴァー ランドにあるもの、登場するものを通して、考えてごらん。

大人たちには行けない場所それは、現実の世界にもあるのだろうか。子どもの心を持っていなければ行けない場所とは、どんな所なのだろう。子どもたちだけが知っている、想像の世界のことなのだろうか。

きみはネヴァーランドの存在を信じられる?この本の世界にすーっと入って行けただろうか?そんなところから、このテーマにアプローチしてみてほしい。

・ピーター・パンを探せ!

もう一つ、大きな問題(ヒントかな)がある。ピーター・パンって、いったいだれなんだ?「ピーター・パンとは~」、こんな文で追求してみてほしい。

「ピーター・パン的人物についての考察」なんていう感想文もおすすめ。きみの周囲には、ピーター・パンみたいな子、いるかな?あるいは、きみ自身が……?

対象は、フック船長でも、妖精たちでも、ウェンディでもいい。登場人物の人物像をつかんで、読解してみるといい。これはちょっと高度なワザだね。

・「部分」にも注目しよう

この作品、会話や、さり気なく差しこまれたフレーズにも、きらりと光る  文がある。読解や感想文では、そういう文章に目を向けることも大切。作品を自分に引き寄せる基点になるし、引用から文章を書き出すこともできるよね。

ファンタジーの原点とも言うべき、「往きて帰る」物語。さて、きみはそこから何を読み取るのか?きみの感想文を楽しみにしている。

 

 

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※出典:読書感想文おたすけブック

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ピーター・パン イン スカーレット

ジェラルディン・マコックラン・作 こだまともこ・訳

デイビッド・ワイアット・絵 / 小学館